「千と一個のボタン物語 」                                                   
             ピエール・フェラン/田中章滋・訳

 警察所長はすべてを見た
広い部屋に入ると
そこには数知れぬほどあった、種類別にビンに入れられ
棚に並んでいた

 真珠母のもの、角でつくられたもの、木で出来たもの、
四角や丸や楕円形
コルセット用、海賊用とか
貞淑な身体用または通行用、
チョッキ用と下履き用・・・

 扉用のもの、呼び鈴用のもの
すなわちシャンソンを繰り返し聴くためのもの

 またはソムリエを呼ぶためのもの
よりどりみどり大きなカフス用
熱病的なもの、むしろ気難かしげなもの用
そして華麗な薔薇のもの。

 小さい長靴用には、小さな黒いの、
海の錨のついたもの
闘牛士のための銀製のもの
壺の中の、こいつは金でできている!

・・・・人々は警察所長をつれてきた
コレクターの死体のそばに

 誰もそいつに好意を示したことなどなかった!
その死人にはポッカリと巨大なボタン穴が開けられていた。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。