Je t'ame de t'aimer   par Marcel BÉALU
『あなたが愛しくて』 
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「目眩」             マルセル・ベアリュ
                 石崎聖子/田中章滋 共訳

若い娘よ もしも私に
勇気がないなら
おまえの薔薇の耳に囁く
あまりに大胆な言葉で
薔薇の娘よ おまえを不快にさせはしない。


お前の体と懇ろになる
その度ごとの奇蹟
とても稀ながら
私は目眩を覚えれば覚える程
その目くるめきの中で
私の過去は消し去られ
唯一の愛に結ばれる
幸せな死の味のように。

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「夢の中の夢」         マルセル・ベアリュ
                石崎聖子/田中章滋 共訳

眠っていないという夢を見たことがある
朝、竟に寝入ってしまった時に
ー何時も夢の中だがー
私は自分の腕の中に裸のお前を抱いていた。
お前はわたしにとって毎日
この心地よい夢のよう
不安に戦く長い夢の末に
お前は私の追憶となるだろう
私が全てを忘れ果ててしまった時に。

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「最後の孤独」         マルセル・ベアリュ
                石崎聖子/田中章滋 共訳

黒い岩の近く
トルヴィルとヴィレルヴィルの間
そこでは潮が断崖を浸食している
時間がわたし達の命を浸食するように
再生されたアダムとイヴ
九月のまだ強烈な太陽の下で
重なりあっている雲のうしろで
北方から来た厚い靄の御陰で
それはアンチフェールの高い煙突をも
消してしまっていた
わたしたちはよく寄り添って裸で寝た
二つの岩の間の砂の上で
窪みの中には、風も届かない
下らぬ人目もない
波の広がり
果てしなく縮小していくその砂浜は
或る領域に属していた
それは人が永遠と呼んでいるもの
おまえとわたしも同じように目醒めながら
名前のない感情が高まる潮騒となるのを聞いていた
最後の孤独
一つに繋がったわたし達の手は似ていた
化石となった貝殻に
静寂の不変のスタッコ(漆喰)の中で
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