『ホムンクルス』        田中章滋

 おれは図体がでかかった。それで、態度も横柄だと言われた。寝る子は育つというが、寒い地方の出だったので、早寝早起きで、のっぽになっただけだったのに。うどの大木だなんて、奴は言ったが、奴はとびきり小さい身体だったのだ。侏儒というほどでもないが。おれと奴は始め仲が悪かった。しかし、馬が合って程なく打ち解けた。お互い見かけと中身が正反対だったのだね。肝胆相照らしたという訳さ。

 おれは見かけ倒しの蚤の心臓。奴は太っ肚。大酒呑みだったので、特に肝臓が強かった。腹を捌いた者はきっと驚いたことだろう。奴の身体の半分以上が肝臓だったのだから。

 今もおれと奴はいいコンビだ。驚異博物館の、ホルマリン漬けの、ガラス容器の中で。おれのラベルには『豆心臓』、奴のラベルには『巨人の肝臓』と記してある。


   ホムンクルス
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