「縞瑪瑙」        田中章滋



縞瑪瑙には、
朝焼けが隠れていると、あなたは言った。
それは高い糸杉の梢から明るんでいき、
やがて煙るように、
木菟の耳と大きな両目の形をした、
島陰に守られて立ち上る
白い虹のようだと、あなたは言った。

それは指でなぞると仄かに光りだし、
やがてひとつひとつの縞を伝わり、             
緩やかな丘陵をすべる露となって拡がっていく。

孔雀の睫毛のように、
ヒースの野原がざわめく。
あなたはドレスに風を孕ませて、
薄明の懸崖に立ち尽す。

何処からか硝煙の匂いがして、あなたは振り向く。
そこに殺意の儀式、雄叫びが交わされて、
銃声の虚ろな響きを聞く。

エヴァリスト・ガロアはその朝、
論文を書き遺し、
決闘に赴いたのだった。
恋文は腹に受けた傷ごとあの世に持ち去ってしまった。
若死にするに勇あるのみと溜息して
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